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Aokijima

80歳になった「ねえちゃ」と、その里の記録です

母の死

  糸を取るおばあちやんちのありしかな

「ねえちゃ」のふるさとを詠んだ私の句です。「ねえちゃ」は、長野県南部の飯田市の近くにある下條村の農家に生まれ、結婚するまでそこで暮らしました。

信州は養蚕の国。「ねえちゃ」の家でも、何よりも蚕(かいこ)が大切にされていました。「糸取り」は、糸を紡ぐ作業のこと。繭を煮て、鍋の湯の中に踊る繭から一本の糸を引き出していきます。

そんな糸取りが、「ねえちゃ」のおかあさんたちにとっても農家を支える重要な内職でした。農作業のあいまにきっと、汗をかきながら懸命に繭から糸を引いていたことでしょう。

「ねえちゃ」の実母は、一家でくつろいでいるときに突然、発作を起こして急死してしまったのです。まだ、50歳を少し過ぎたくらいの若さだったそうです。疲労などが引き金になって心不全でも起こしてしまったのでしょうか。

末っ子だった「ねえちゃ」は、まだ幼くて「母の死」というものをすぐにはのみこめなかったようですが、そのとき受けたショックは、いまも記憶に焼き付いたまま離れないといいます。