Aokijima

80歳になった「ねえちゃ」と、その里の記録です

メッケル洞

2年くらい前、かかり付けの病院の定期検査で「ねえちゃ」の脳に、ちょっと判断の難しい影のようなものが見つかったので、と脳神経外科の専門病院でMRIなどによる精密検査を受けたことがあります。

眼の後ろの奥のほうに三叉神経が集まっている「メッケル洞」という空洞があるそうです。「三叉」というのは、眼神経、上顎神経、下顎神経の三つの神経に分かれる神経で、体の運動や知覚をコントロールする重要な役割を担う、脳内で最大の神経だとか。

精密検査の結果は、このメッケル洞に水が溜まっている可能性が高い、とのことでした。医師によると、最近の病変ではなく、子どものときからこうだった可能性もある。むかしは取り除く手術をしたこともあったけれど、最近はリスクをおかしてまで取る必要はないと考えられるようになった、そうです。

物忘れがはなはだしくなり、「泥棒が来た」などと突然いい出すようになったころだったので、「アルツハイマーとか脳血管系の痴呆の兆候のようなものは画像で見られなかったのですか」と尋ねると、医師は――

「痴呆は進んでこないと、なかなか画像ではとらえられません。脳血管もきれいで、特に変わったところは見られませんでした。お嫁さんを見たら、泥棒だと叫び出すくらいにならないと……」との返事でした。