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Aokijima

80歳になった「ねえちゃ」と、その里の記録です

血圧手帳

きのう「ねえちゃ」は、だいたい3か月に1度の割合で通っている街の総合病院へ出かけました。最近、自分ひとりでトラブルなく行ける外出先は、ほとんどこの病院だけになってしまいました。

通院といっても、重い持病があるわけではありません。念のためにと、毎日1粒ずつ飲んでいる高血圧の薬の処方をしてもらいに行くのです。でも、この時だけは、ひとが変わったように率先して自らタクシーを予約して、きのうもトラブル無く帰ってきました。

友だちと遊ぶ約束や近くの歯医者の予約など、ことごとくキャンセルをして周りを困らせ続けている「ねえちゃ」なのに、距離的にはいちばん遠いこの病院だけは、どうして忘れずに自主的に行くのでしょう。病院でだれか友だちでもできたのかな?などと、ずっと不思議に思っていました。

実際は病院へ行っても待っている時間が大半で、診療といっても先生とは事務的な話をするだけ。血圧を測ることすら無いといいます。大きな病院なので、待合室での顔見知りもできないそうです。

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「ねえちゃ」はこのごろ、「頭がボケてきて」とか自分でもしばしば口にするようになりました。なので「せっかく高いタクシー代払っていくんだから、ボケが進まないようにするにはどうしたらいいのかとか、ひとこと相談したらいいのに」と、いつも口うるさくいいます。

でも、いつでも聞き流すだけで終わってしまいます。よくよく問い詰めてみると、家族がそういうので謙遜気味に「頭が……」と周りに切り出すだけで、本当は「少し物忘れはあるけど、ボケてきたとは全然思っていない」のだというのです。

だから、思ってもいないことを先生に言えない(プライドが許さない)というのが、周辺にはやや意外な、本音のようです。

それにしても、友だちと遊ぶのまで「行く自信がない」とキャンセルするようになったのに、どうして、この病院に行くことだけは忘れず、律儀に続けているのでしょう。その理由の一つに、どうも「血圧手帳」がありそうに思われてきました。

「ねえちゃ」の欠かさない習慣に血圧測定があります。毎日必ず測って、グラフにしていきます。そんな書き込みが、もう13冊びっしり埋まりました。グラフを書き込んでいくのが「ねえちゃ」にとって、どこか生きる張り合い、楽しみにもつながるところがあるのでしょう。

ちゃんと毎日書き込んで、きちんとやった証のグラフを先生に見てもらう。それは、学級日誌をちゃんと書いて先生にマルをもらって励みにする子どもに、どこか似たところがあるような気がします。

きのう、病院で14冊目の「血圧手帳」をもらってきた「ねえちゃ」は、帰ってくるとさっそく血圧を測って、新しい最初のページに記入しました。

物忘れが多くなっても、血圧のグラフをコツコツと毎日、書き続けていく。立派だ、と思います。でも、そんな立派さが、なんとも言えない寂しさを誘うのです。