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Aokijima

80歳になった「ねえちゃ」と、その里の記録です

特別な「3・11」

「3・11」から5年。あの日の津波の実態を追ったNHKの特集番組などを「ねえちゃ」も、「恐ろしことが起きてたんだね」などと大きな声をあげながら、いつもになく熱心に見つめていました。

でも、あの日、どこでどうしていたのか、いまではもう「ねえちゃ」の記憶にはあまり残ってはいません。津波からは遠い山国にいたとえはいえ、夫が死の床につくという、差し迫った現実に直面していたはずなのですが。

5年前の3月11日は、いよいよ臨終が近づいてきて個室に移されたころのはずです。「そういえば、看護師さんにベッドの隣に寝るところ用意してもらって、病院にずっといたかもしれない……」といったあたりまでで、それ以上ははっきりしないといいます。

東日本大震災から3日後の3月14日未明、夫は天寿を全うして病院で亡くなりました。「ねえちゃ」は、悲しみに打ちひしがれる、というよりも納得した感じで、比較的落ち着いて見送っていました。

「ねえちゃ」は、ふだんは地震には無頓着です。家の近くが震源緊急地震速報が流れても「たいして揺れなかったよ」と平然としています。

それでも、連れ合いの死といっしょに訪れたこの大震災には、やはり特別なものがあったようです。現地の自治体へ応援で行った人の講演を聞きに出かけたり、長年貯めたコイン貯金を寄付したりもしていました。

山国で暮らしてきた「ねえちゃ」には津波の経験はありません。でも、山崩れや洪水などの治山・治水対策を仕事にしていた夫とともに、いろんな被災地の近くで暮らしてきた長い月日があります。

そんな「ねえちゃ」だけに、人並み以上に、被災者のかたたちの気持ちに寄り添えるところがきっとあるに違いありません。