5年の節目
「ねえちゃ」には、東日本大震災が特別なかたちで、印象に強く刻まれています。
震源からは遠い山国にいたので直接の被害があったわけではありませんが、奇しくも2011年3月11日は、入院していた連れ合いが危篤の状態に陥った日だったのです。
震災でなにもかもが混乱を極めるなか、ようやく病院にたどり着いた家族に看取られて、3日後の14日未明、83歳で夫は逝きました。
ほとんど意識がなかった連れ合いが、あの日の地震の揺れ、あるいは、いつもと違う看護師さんたちの話ぶりなどで、日本に未曽有の大震災が起こっていたことが察知できていたのかどうか。
それは、「ねえちゃ」にも分からないそうです。
毎年、この時期になると、テレビや新聞で、震災にかかわる特集や企画が集中するようになります。ですから、いくら忘れぽくなった「ねえちゃ」でも、こうした報道とともに、夫の命日が近づいていることに気が付きます。
今年は、あれから5年の節目。テレビからも「まもなく震災から5年です」といったアナウンスが頻繁に聞かれるようになりました。
そんなニュースを耳にした「ひなまつり」の夜、「おじいさんが死んで、もう5年になるんだ。早いね」と、「ねえちゃ」はポツリ、もらしていました。