ゆでだこ
週に1回、届けてくれる生協で、「ねえちゃ」が毎回かならず注文するものがあります。冷凍の「ゆでだこ」、あるいは「酢だこ」です。
毎週月曜日に、前の週の注文品を届けてくれるのですが、最近の「ねえちゃ」は、どんな物が届いたのかどころか、受け取ったかどうかもすぐに忘れてしまいます。
冷蔵庫の中には、注文したまま忘れて食べないでいるものがゴロゴロしています。でも、絶対に忘れず、届くとすぐに食べてしまうのが「たこ」なのです。
山間の小さな村の農家で育った「ねえちゃ」。近くに魚屋さんも無ければ、むかしは冷蔵庫もありませんでした。
魚といえばアユやコイといった川や沼でとれるものばかり。海の魚介類を新鮮なまま、ましてや生で食べることなど、ほとんどできませんでした。
ですから、子どものころの海の幸といえば、日持ちのする、ゆでた「たこ」くらいしかなかったのだそうです。
「ねえちゃ」だけでなく、両親ら一家そろって「たこ」が大好き。みんな、食べるのを楽しみにしていたということです。
最近は、「**を買おう」と紙に書いてスーパーへ出かけて行っても、たいてい忘れて帰って来る「ねえちゃ」ですが、「たこ」だけは忘れません。