カントのように
最近は、一日中パジャマで家にいることが多い「ねえちゃ」ですが、以前は「カントのように」規則正しい生活を送っていました。
カントはドイツの大哲学者です。生涯独身で、大学から帰宅すると、決まった道筋を決まった時間に散歩をしました。その時間があまりに正確なので、散歩の通り道にある家では、カントの姿を見て時計の狂いを直したと言われています。
この逸話を知っていた「ねえちゃ」の夫は、規則正しいことを表わすのに「カントのように」という比喩をよく使っていたのです。
「ねえちゃ」の場合、散歩は朝でした。4時半ごろ起きて、5時くらいに出かけてNHKのラジオ体操がはじまる6時30分の寸前にピッタリ帰って来るというのを日課にしていました。
カントほどではないにしても、散歩では「いつも同じあたりで同じ人に会って、おはようございますというの」と自慢していました。
けさはあれを見てあっちで一休みして、といういい加減な散歩ではなくて、ただいつもの道を、いわば虚無僧のように歩いて時間までに帰って来る、というタイプ。
帰ってきてラジオ体操が終わると、ご飯に味噌汁、海苔、納豆といったいつもの朝食を取って、洗濯にかかるのです。
とても健康的で良いことは良いのですが、生真面目な「ねえちゃ」は「ラジオ体操に間に合うように散歩ができる時間に起きないと」と、眠れないのが気になり、しばしば睡眠導入剤を飲むようになりました。
やがて、そんな朝の散歩になんとなく疲れてしまったみたいです。でも、気が向くとラジオ体操はときおりやっています。